金色に光る海 – 駿河湾の風景を面で楽しむ【沼津・富士の夕日】

2022年の大晦日、ちょっと遅い時間に起きた私は、ふと海を見に行きたくなった。初めは江ノ島に向かうつもりでいたが、もう少し遠くまで行きたいという思いが湧いて、沼津を目指すことにした。

やってきたのは、沼津の千本浜公園(千本松原)だ。急いで準備をして、クロスバイクを抱えて電車を乗り継いだ。自転車を持って電車で移動するのは(輪行という)なかなかに面倒だし、重たくて場所も取る。それでも、現地についてからの楽しみが倍増することは間違いない。

ただ、上の写真を見てもわかるように、肝心の富士山が見えない。晴れ渡っていれば、左手に駿河湾の海、右手には千本松原と富士山が見えるはずなのだ。

まあ、見えないものは仕方がない。千本浜公園から約20km離れた田子の浦を目指して、ひたすらペダルをこぐ。今回は途中で工事区間を迂回を要したが、基本的には堤防の上を気持ちよくクルージングできる。

景色は基本的に、左に海、右に松原。そして晴れていれば、松原の向こうに富士山が見える。もし景色に変化がないと感じるようだったら、ときどき止まって海を眺めてみたり、松原へと降りて少し歩いてみたりすればよいだろう。

沼津駅を14時前と、そもそものスタートが遅いから、あっという間に日が傾いてくる。そして雲の様子との絡みもあって、一見単調に思える風景も、徐々に変化していく。

田子の浦港の東側にある公園まで行くつもりだったが、ちょっと時間が足りないかもしれない。工場地帯の交差点で折り返し、千本浜公園に戻ることにした。今回は、この戻るタイミングこそが重要だ。

金色の光の中を、自転車で走りたかった。

堤防の上に立って日没を眺めるのもよいけれど、今日は田子の浦から千本浜公園まで、約20kmに渡る海岸線の風景を、面で感じたかった。

16時。相変わらず富士山は見えないが、それでも眼前の風景に高揚している自分がいる。あと20分少々ペダルをこげば、日没直前のちょうどよい時間に千本浜公園へと到着するはずだ。

16時30分。休憩を挟みつつ狙いどおりの時間に千本浜公園まで戻ってきた自分を、心の中でほめる。

堤防や浜には、出発時よりもたくさんの人がいた。

ところで富士山よ、そろそろ見えていてもよいのではないか?

見えていても……?

見えた。

やっと、そして、これ以上ないタイミングで姿を見せた富士山。サイクリングの疲れが吹き飛ぶ瞬間だった。

大晦日だから、飲食店はほとんどやっていない。だけど、日没後にファミリーマートで買った「ジューシー本格肉まん」を頬張りながら、しばし私は満足感に浸った。

千本浜公園には駐車場もあるから、車に自転車を積んで来るのもよいだろう。

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投稿者: wagtail_sugai

須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれの町田市育ちで、現在は川崎市在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。

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