タミヤの二式水戦がある限り、私は宿毛を思い出す。

先月末に訪ねた高知県宿毛市で戦争遺構を見て、帰宅後に勢いで買ったタミヤの「1/48 傑作機シリーズ 海軍二式水上戦闘機」。週末に時間を工面して、組み立てました。

[先日の記事はこちら]

咸陽島公園から眺める宿毛湾

……とその前に、本当に宿毛に二式水上戦闘機がいたのかどうか、正直なところ私にはよくわからないのです。

宿毛市のWebサイトで、宿毛歴史館宿毛市史宿毛市史目次近代、現代編-軍事-宿毛湾の防備 を読むと、こんな記述がありました。

昭和18年4月1日第3艦隊50航空戦隊に編入・水偵搭乗員練成隊
昭和19年1月1日宿毛空を453空と改称、佐世保鎮守府に所属(指宿航空隊へ)
配備機種及び機数(野口氏の資料による)
○二座水上偵察機 9機
○三座水上偵察機 9機
○二式水上戦闘機 9機
初代分隊長 野口 克巳大尉
隊 員 250名
隊長野口克巳氏(中村市有岡出身)によれば、宇須々木は波の関係で水上機の練習にあまり適していなかったので、鹿児島県指宿航空隊配属となり移動したとの事である。

情報源: 近代、現代編-軍事

これを読むと、二式水上戦闘機が宿毛にいたのか、それとも指宿に移ってから配備されたのかわからないですね。

まあ、宿毛に水上機がいたのは間違いないということで、タミヤの二式水戦を組んで当時を想像してみるというのは悪くありません(ということにしておきましょう)。

私は飛行機のプラモデルなんてまともに作ったことがなく、自分に組み立てられるか不安でしたが、おそるおそる箱を開けてみれば「これは確かに飛行機のプラモデルだ」と思わせるランナーが入っていて、眺めているだけで楽しくなります。

宿毛に二式水上戦闘機がいたとして、どんなカラーだったのか? 説明書の組み立て見本や解説文、イラストを眺めながら想像してみたり。

ああ、このまま「組まずに過ごす」のもありかも。いや、組むか? しばし逡巡します。

組んでグレーに塗ろうかと思い、一度は塗料も買ってきました。しかし、先日も書きましたが「nippper」の記事に掲載された二式水上戦闘機関連が、どれも無塗装だったり製作者のオリジナルに塗られていたりして、説明書どおりに塗装されたものがないことが印象に残っていました。

よし、組むぞ。

無塗装で!

「塗らなくてもいいじゃん」と決めたらずいぶんと気持ちが楽になって、集中して組み立てることができました。とはいえ私は二式水上戦闘機、それどころか戦闘機の知識がないので、ちょっとでも説明書があやふやなところがあると「これは、どうなるわけ?」と困ってしまい、なかなか進みません。

結局、カタチにするのに3時間以上かかったでしょうか。

ようやく、私の「二式水戦」が完成しました。

夕暮れの宿毛湾で撮影した写真と、完成した二式水戦を頭の中で重ね合わせてみます。当時の人たちは宿毛の地で、どんな気持ちで水上機の訓練をしていたのでしょうか。実戦部隊に転換されて九州に移る際には、何を思ったでしょうか。

水上機だけでなく、宿毛で休息を与えられた艦隊、震洋の隊員や整備士、そして水上機や艦船が行き交うのを眺めた地元の人たち——いずれにしても、この二式水戦が目に入るたび、私は宿毛の戦争遺構を思い出すでしょう。

投稿者: wagtail_sugai

須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれの町田市育ちで、現在は川崎市在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。

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