【CyclingEXアーカイブ】MTBに乗るとロードバイクにもメリットがある!? ドゥロワー・山路篤さんに聞く

最近再び、MTB(マウンテンバイク)人気がジワジワと高まっているように思います。もちろん、流行り廃りに関係なくMTBはそこにいたわけですが、ロードバイクからスポーツ自転車の世界に入った人たちが、MTBの面白さに注目し始めているようです。

photo_drawer THE CYCLING CLUB

そんなことを感じていたある日、神奈川県大和市にあるショップ「ドゥロワー・ザ・バイクストア」の店長であり、MTBチーム「ドゥロワー・ザ・レーシング」の監督でもある山路篤さんが「MTBでオフロードを走ると自転車が上手くなる」「とくにジュニア世代がスポーツ自転車を始めるならMTBから入るのがよい」と話しているのを聞きました。

それって、どういうこと!?

というわけで、山路さんに詳しく伺ってみました。

オンロードだとわからないことが、オフロードだとわかる

MTBでオフロードを走ると、自転車が上手くなる。その理由としてまず山路さんが挙げるのが、ペダリングスキルが身につくということです。

「自転車を前に進めるためには、ペダルをこぐ必要があります。そして、タイヤと路面がしっかりグリップしてロスが無い状態であれば、自転車がちゃんと前に進みます。ところがオフロード、不整地だと、そもそもタイヤと路面がちゃんとグリップしていないわけです」

ちゃんとグリップしていない……つまり、すべりやすいということですよね。

「例えば、MTBに乗ってオフロードの上り坂でダンシングをすると、きれいな舗装路と同じ感覚のままでは、荷重が前にかかって後輪のグリップが抜けてしまい、自転車がちゃんと前に進みません。つまり、その乗り方は“推進力が失われる動き”なのです。そういったことが、オフロード上では如実に体感できます」

なるほど。オンロードだと露見しにくいけど、これって実は無駄な動き……というのが、オフロードだとわかるわけですね。

大切なのは適切な体重移動による姿勢の制御

ペダルをこいで自転車を前に進めることだけでなく、コーナリングやブレーキングなどでも学べることが多いと、山路さんは話します。

「コーナリング中は、リーンしている状態を安定させておかないと、ハンドルが切り込んだりしてずるっとすべるわけです。すべるとそれだけ前に進みませんし、最悪の場合は転倒してしまいます。もしくは、その恐怖感から必要以上にスピードが落ちて、かえってギクシャクした走りになってしまう」

確かにコーナリングが苦手な人、とくに下りコーナーが苦手な人は多いでしょうね。私もはっきりいって得意ではありません。オフロードでMTBに乗ることで、それをある程度克服することができるのでしょうか。

「大切なのは、接地状況を把握しながら、慣性に応じて適切な体重移動を行うことです。これは、前に進むときもコーナリングのときも、そしてブレーキングのときも同じ。つまり自転車をコントロールする以前の問題として、自転車の上で自分の身体を自由自在にできることが大事になります」

それが、オフロードだと身につけやすい、と。

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「不整地だと姿勢が乱れやすく、速度が出ないのでより不安定になります。その不安定な中で、ライダーが積極的にバランスを取らなくちゃいけない。だからこそ、バランス感覚や不意な挙動に対する対応、自転車を進める上で無駄な動きを排除するといった力が養われます。オンロードでは脚力だけの勝負になりがちだけど、オフロードではスキルがないと上手く走ることができません。そこが、面白さでもあるんです」

ロードバイク以外のスポーツ自転車に乗ったことがない人にとっては、視野を広げるよいきっかけにもなりそうですね。

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「例えば、ロードバイクで空気圧をシビアに変えている人はあまりいないと思うのですが、オフロードだと、変えたことによって何が起きるのかが体感しやすいんです。それに、オフロードは走っているだけでも処理する情報量が多く、距離のわりに運動量も増えるので、オンロードとは違った視野・知識を得ることができることは、間違いありません」

ゴールデンエイジまでにスキルを身につけろ!

ロードバイクしか乗ったことがない人がMTBでオフロードを走ることで得るものがあることは理解できました。子供、ジュニア世代がMTBをやったほうがよいというのも、スキルを身につけるためということでしょうか。

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「オンロードは脚力だけの勝負になりがちだと言いましたが、体力がないキッズやジュニアのうちに脚力勝負をやっても、意味がありません。筋力は成長に伴って後からついてきますから、まずは自転車を操る技術を身につけるのがよいでしょう。うちのお店に来る中学生や高校生にも、MTBを勧めています。高いものから始める必要はありません。まずはエントリーモデルで土の地面を走るところから入ってもらえればと思います」

プロのロード選手でも、バイクコントロールが上手だとされている選手はBMXやMTB出身であることが多いですね。

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「小さい頃からオフロードに慣れ親しんで、ゴールデンエイジと言われる、運動神経が大きく向上する時期(小学校高学年)までに基本的なスキルが身についているのが理想ですね。お子さんが自転車好きで、親も子供にもっと自転車をやらせてみたいと考えているなら、ぜひオフロードを走らせてあげてください」

ショップやパークを活用してMTBを始めよう

大人は、もう遅いということはないですか?もちろん、子供の成長には到底敵いませんが。

「知識・視野を広げ、新しい遊びを知ることは大きな意味がありますし、今までどれだけ無駄な動きをしていたかもわかります。ぜひ、MTBでオフロードを走ってみてほしいですね。シクロクロスやグラベルロードバイクで未舗装路を走るだけでも、変わることがあるはずです。MTBを始める場合、最初の1台は27.5インチ・ハードテールのトレイルバイクなどで十分。MTBの練習会や走行会をやっているショップであれば、走るフィールドも知っていますから、そのショップのコミュニティに参加すると良いでしょう」

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近年、稲城の「スマイルバイクパーク」や小田原の「フォレストバイク」のように、首都圏でインストラクターがいるMTBパークもオープンしていますし、レンタルMTBもあるので、まずはそのようなところから体験して見るのも、よいのではないでしょうか。

私自身、MTBには乗っているものの、わりと「なんとなく」乗っているだけだったので、これからはもうちょっと意識して乗ってみたいと思います。

もちろん、今回お話を伺った山路さんが店長を務める「ドゥロワー・ザ・バイクストア」(神奈川県大和市)では、MTBでのライドイベントも行っています。お近くの方は、ぜひどうぞ。

●山路 篤(やまじ・あつし)さん

「drawer(ドゥロワー)」代表。工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に自転車業界に特化した人材育成を手がける「drawer(ドゥロワー)」を設立。2016年12月に「drawer THE BIKE STORE」を神奈川県大和市にオープン。

リンク: drawer THE BIKE STORE- ドゥロワー ザ・バイクストア – | – ドゥロワー ザ・バイクストア –

CyclingEXの従来版サイト(https://www.cycling-ex.com)で公開していた記事を一部を再編集の上、「CyclingEXアーカイブ」として掲載しています。
初出:2019年2月20日

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投稿者: wagtail_sugai

須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれの町田市育ちで、現在は川崎市在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。

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