「あの日見た金閣寺」を再現するつもりが「見たことのない金閣寺」になった

家電量販店の中を散歩するのが趣味である私はある日、模型売り場で「金閣寺」のプラモデルを見つけました。その日は「ふーん」という感じだったのですが、気がつくと作りたくなっていて、後日買ってきてしまいました。

尊く優美

気がつくと……とは書きましたが、購入に至った明確な理由があります。ひとつは「nippper」の記事を読んだこと。金閣寺のプラモデルの話はいくつか掲載されているので、このあたりから見てほしいのですが、中でもこちらの記事。

「金のマッキー」で塗る金閣寺。

上記リンク先の記事では金閣寺の平面パーツを金のマッキーで塗っても、ちょっと快感が足りない……といったことが書かれているのですが、これを読んだ私は「塗りたい塗りたい! 金のマッキーで金閣寺を塗りたい!」と強く思ったのでした。

私が最後に金閣寺を見たのは二十数年前の紅葉シーズン、やたらと天気がよい日でした。強い日差しを受けた金閣寺は、目が痛くなるほど、そして笑っちゃうほどにビカーッと輝いて見えたのを覚えています。

金閣寺を、もう一度見たい。

金閣寺のプラモデルを買ってきたのは、2020年12月初旬。そう、金閣寺の葺き替えが終盤にさしかかり「そろそろ公開か?」という頃のことです。GoToトラベルが中止されるのかどうかというタイミングですし、個人的にはなかなか「京都行こう」などと思える状況ではありませんでした。

「金閣寺に行けないのなら、プラモデルを作ればいいじゃない!」

nippperの記事を読みつつ、土台のパーツに色を塗り、水面のシールを貼り、緑色のパウダーをふりかけ、そして金閣寺のパーツを金のマッキーで塗っていきます。正確なことは知りませんが、このプラモデルはどう見たって昔からある製品で、その組み立てについては案の定「簡単そうに見えて苦労する」わけですが、今回は金閣寺をカタチにしたい一心で乗り越えました。

数日ののち、少しグダグダにはなりながらも、私の金閣寺がデスクの上に出現しました。iPhoneのライトを当てて写真を撮ってみれば、あの日見たビカーッと光る金閣寺の記憶が蘇るではありませんか。

安価かつ古いプラモデルそのものですが、こうやって眺めてみるとデフォルメ具合はなかなかよいんじゃないでしょうか。それに金色に塗られていることもあって、これを金閣寺と認識しないほうが難しいのは有利と言えます。

何より、金閣寺の葺き替えが終わったというニュースより先に「私の金閣寺」ができあがったことを、とてもうれしく感じました。

1週間後——。

Twitterのタイムラインに、金閣寺についての記事が流れてきました。

リンク: 金閣寺、18年ぶりの葺き替え完了で金色復活 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン

はい?

読売の記事には『サワラの木の板約10万枚を交換した』とあるから、屋根に金箔を貼ったわけではないことは理解できます。しかし、記事に添えられた写真はどうみても屋根まで金色じゃありませんか。

もちろん、写真によっては明るい赤茶色にも見えます。

でも、別の写真ではやっぱり金色にしか見えない!

で、あれば。

塗るしかないでしょ!

だって、屋根が葺き替えられた今、おみやげ屋さんで売ってる金色のミニチュア金閣寺のほうが解釈正しいってことになるでしょう。だったらこっちも金色で勝負だ!

塗った瞬間「あ、違うなw」と思ったのも事実だけど、塗り終わって屋根まで金色になった金閣寺は、それはそれで愛嬌を振りまいています。

「あの日見た金閣寺を再現する」はずだったプラモデルは、結果として「見たことがない金閣寺」になりました。

「想像力で補う」上等! だって本物見たことないし!

在宅勤務の合間、屋根まで金色の「私の金閣寺」をいろんな角度から眺めつつ、コーヒーを飲んでひと息ついたりする毎日です。きっかけを与えてくださったnippperに感謝いたします。

リンク: 日本の伝統美シリーズ JD12 金閣寺(童友社)

[AD]

Nikon ミラーレス一眼カメラ Z fc Special Edition キット NIKKOR Z 28mm f/2.8 SE付属 ZfcLK28SE

投稿者: wagtail_sugai

須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれの町田市育ちで、現在は川崎市在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。