27年ぶりに小説『アップル・ジャム』を読む

作家・山川健一が1997年に出した小説『アップル・ジャム』を久しぶりに読みました。発売された当時に紙の本を買って読んだのですが、今回は電車の中で読みたかったので、Kindle版を購入。

版元が、中央公論社から幻冬社に変わっており、当時とはまったく異なる表紙はなんだか官能小説のようだなとも思いました。

当時のコンピューター・ネットワークやMacに影響を受けて書かれていますが、なにぶん27年前のことです。

オリジナルの表紙に使われているコンピューターは、AppleのPowerBook Duo 280cだと思われます。今のmacOSの日本語変換は「ぱわーぶっく」と入力しスペースキーを押しても「PowerBook」という候補は出てきません。

登場人物の男女が連絡を取る手段は、パソコン通信のニフティサーブです。本が出た時点ではインターネットがあったし、BBS(掲示板)もありました。MacユーザーならEudora-Jなんかを使って、E-Mailのやりとりもしていたでしょう。でも、コミュニケーションの場として、ニフティサーブはまだまだ健在でした。

「Apple Talk」という章があります。当時のMacが採用していたネットワークのプロトコルは「Apple Talk」と呼ばれるもので、TCP/IPとはまったくの別物でした。同じネットワーク内のMacやプリンターと接続するのに使われていました。もちろん、現在ではサポートされていません。

27年経って、AppleはiPhoneの会社になり、人々はSNSでやりとりをするようになりました。この小説のように、メールでやりとりしつつ固定電話でも連絡を取り合うなんて、プライベートではほぼなくなったのではないでしょうか。

一方で、27何年経っても変わらないもの——それは、男の「みっともなさ」なのかもしれません。

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投稿者: wagtail_sugai

須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれの町田市育ちで、現在は川崎市在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。